(雑誌『表現者クライテリオン』に鈴木傾城が寄稿しています)
地獄が来ている。中国発コロナウイルスによって日本経済は3月から自粛モードに入っていたが、2020年4月7日より政府は国民に緊急事態宣言を発令して、より強い自粛や休業を要請することになった。
コロナウイルスの感染者が広がっていく中で行われた措置だったが、これによって日本経済は急停止して低所得の非正規雇用者が一気にリストラ・雇い止め・無給の一時休業に追いやられることになった。
いったい、どれほどの人たちが失業したのか。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏は「緊急事態宣言により、国内の失業者は1か月で36.8万人に上る可能性がある」と述べている。
こんな中、横浜市でひとつの事件が起きていた。2020年4月25日、不動産会社の女性社員が24歳の男を横浜市旭区のアパート物件を内覧させていたのだが、男はいきなり包丁を取り出して女性社員を刺し、現金数千円が入ったカバンを奪って逃げた。
この24歳の男は翌26日に強盗殺人未遂容疑で逮捕されたのだが、なぜこのような事件を起こしたのか。男は3月末まで大阪で働いていた。しかし新型コロナウイルスの影響で仕事を失って神奈川に戻り、ネットカフェで生活するようになっていた。4月に入ってから所持金がなくなって路上生活に入り、借金も20万円できていた。
生活に困り、もはや精神的にも追い詰められた男は自暴自棄に陥って事件を思いついた。それが不動産会社の女性社員を刺して、カバンを奪って逃げるというものだったのだ。ネットカフェに寝泊まりしていた男が路上生活に追い込まれ、たった数千円のための女性を刺す。そんな事態になっていた…(鈴木傾城)
(続きは、「危機」と対峙する保守思想誌『表現者クライテリオン』2020年7月号でお楽しみ下さい)