大災害に見る日本人の真の能力。日本人の真骨頂は戦いに勝つことではない?

大災害に見る日本人の真の能力。日本人の真骨頂は戦いに勝つことではない?

巨大な大震災で何度も破壊されても日本は蘇る。考えてみれば、これは他の国々とはまったく違うものだ。日本人は災害でどんなに大きく破壊されても、どんなに不可能であると外側から断定されても、長い時間をかけてきちんと復旧してしまう。さらに、より強くなって蘇る。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

震度3程度の地震で国民総パニックになっていたら暮らせない

2021年3月20日、宮城県沖で震度5(マグニチュード6.9)の地震が起きているのだが、これについて政府の地震調査委員会は「さらに強い揺れをもたらす地震が発生する可能性がある」と注意を呼びかけている。

ここ最近、世界中のあちこちで大きな地震が頻発して起こるようになっており、不気味な情勢になっている。地震というのは「来る」と身構えているときはこないのだが、忘れた頃には不意にやってきて社会に大きな被害を与える。

人々はコロナ禍という災害に気を取られているのだが、地震の方も注意するに越したことはない。

日本は災害列島だ。毎年、巨大台風に見舞われる。大地震は必ずくる。大規模な火山も必ず起きる。集中豪雨で浸水する。これほど災害が次から次へと襲いかかって来る国も珍しい。

昔からそうだった。これからもそうだ。南海トラフ巨大地震はすでに「30年の間に必ずくる」と予測されている。(ダークネス:東日本大震災の21倍。32万人が死ぬという南海トラフ巨大地震

その被害の巨大さに政府は緊張を隠さないのだが、問題は南海トラフ巨大地震だけでなく、あちこちの断層が揺れ動いて突発的な地震が次々と起きることだ。こうした地震も日本を次々と破壊して大きな被害をもたらす。

さらに今後、温暖化や自然破壊の影響で、地球の環境はより悪化していくことになるのは間違いないのだが、そうなると当然のことながら日本にも大きな影響を及ぼすことになる。

だから日本人は「災害慣れ」せざるを得ない。他国のように震度3程度の地震で国民総パニックになっていたら暮らせない。

他の国では広範囲に渡って街が破壊され、一気に何千人、何万人もの人たちが被災するような巨大災害に見舞われたら、それこそ社会不安が全土を覆って破滅的な事態になってもおかしくない。

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どんなに時間がかかっても、日本人はあきらめない

日本だけを見ていると気がつかないが、日本以外の国では災害で損害を受けると、それが社会不安につながってどんどん破壊が広がっていく。略奪・暴動・銃撃戦が起きるのだ。

それこそ被災地に軍隊が入ると、最初の仕事は救援活動ではなく暴徒の制圧であったりする。先進国アメリカでも、被災地は無法地帯と化して略奪はごく普通に起こる。略奪が起こらない日本は「例外」なのである。

また、多くの国では被災者は地域を復旧させるのではなく、甚大な被害に遭った地域を捨てる決断をすることも多い。そこが重要拠点でもない限り、多くの被災地は見捨てられたままゴーストタウンのようになっていく。

その点、日本人は意外なまでに冷静だ。「国が悪い、政府が悪い、社会が悪い」と泣き言を言わず、誰に言われるまでもなく復旧作業を自然に始め、どんどん回復させて元に戻してしまう。

どんなに時間がかかっても日本人はあきらめない。そして、いつの間にか立ち直っている。立ち直ったときは以前と違って「より強い姿」になっている。街やインフラが壊れても粛々と復興し、工夫しながらより強くなる。それが日本なのだ。

もちろん、その日本と言えども過疎地区のような場所になると復興させることもできなくなってしまうケースも生まれてくる。しかし、基本的に日本は今もなお災害の後は復興が粛々と続けられる。

工夫。改善。対処。復活。何度も蘇る日本人のこのような特殊な精神構造は、いったいどこから来たのか。考えてみれば、これは他の国々とはまったく違うものだ。

日本は災害でどんなに大きく破壊されても、どんなに不可能であると外側から断定されても、長い時間をかけてきちんと復旧してしまう。さらに、より強くなって蘇る。

壊されても、壊されても、どんなに時間がかかっても、「より強くなって生き返る」気質を持っているのが日本人だ。

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最も得意としているのは、勝つことではない

日本人は気がついていないが、日本人が最も得意としているのは勝つことではない。壊滅的なまでに負けても再び立ち上がり、「より強くなっていく」ことなのだ。

毎年のように突然やって来る地震や台風のような巨大災害が、日本人の特異な民族性格を形作っている可能性がある。

歴史的に、日本人は地震や台風や火事で、築いてきたものが一瞬にして破壊されるという経験を毎年のように経験する。そこから逃げられないし、自分だけ助かろうとしても無駄なことも知っている。

自然災害はワイロを渡して見逃してもらうことはできないし、正確な予測も回避もできない。どんなに金があろうがなかろうが平等に被害をもたらす。

だから、破壊されても「こんなこともある」と静かに「破壊を受け入れる」精神が日本人にはある。人間は自然に勝てない。日本人も自然には勝てない。日本人が「負け」を潔く認めるのは、ここから来ている。

自然災害にはどうあがいても勝てない。しかし、日本人の真骨頂はその後にある。「負け」を認めた後、今度はその負けを分析し、研究し、克服を考え、「より強くなっていく」のである。

要するに日本人の特質は、叩きのめされたところから始まるのだ。日本人はそれを意識していないが、日本人の最大の長所は「より強くなる能力」だ。

・巨大なものに叩き潰される前提で生きる。
・叩き潰されてもあきらめず、復活に集中する。
・対応力を身につけ、より強くなって蘇る。

これが日本人だ。日本人はありとあらゆる分野にこの「より強くなる能力」を自然に生かして能力を向上させる。これが日本人の知らない日本人の最大の特質だ。

日本は第二次世界大戦で原爆投下で国土を壊滅的に破壊されただけでなく、各都市が大空襲で焼け野原になった経験もしている。

そうした前代未聞の「破壊」からも不死鳥のように蘇ったのは、「叩きのめされたところから始まってより強くなる」という災害で培った能力があったからではないだろうか。

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より強くなって復活する「気質」を持っている

他国では「叩き潰される前提で生きる」という部分から受け入れがたいと思うはずだ。それよりも勝つことを前提に生きる。

また、まわりが叩き潰されて自分がかろうじて生き残っていたら、今後を考えて行動するよりも、まず誰かに責任を取らせることを考えることが多い。

責任を取ってくれないなら、暴れるか逃げる。だから「より強くなる」という結果に至らない。あきらめるという選択肢がまったくないのが日本人の特質だ。

よく考えて欲しい。毎度のように巨大な自然災害が起きて、今までの営みをすべて吹き飛ばしてしまうような「劣悪な大地」が日本なのに、その日本で日本民族は長い歴史を刻んでいる。

普通に考えるのであれば、自然災害のない国の方が長い歴史を保っているはずだ。しかし巨大台風から壊滅的な大地震まで、次から次へと災害に見舞われる日本が「よりによって」長い歴史を持っている。

これは偶然だったのか。いや、絶対に偶然ではない。日本人は何があっても生き延びるだけでなく、国家的な危機のあとには、より強くなって復活する「気質」を持っているのだ。

・巨大なものに叩き潰される前提で生きる。
・叩き潰されてもあきらめず、復活に集中する。
・対応力を身につけ、より強くなって蘇る。

どこかの火山が爆発して日本が終わるとか、南海トラフ大地震が起きて日本の歴史は終わると言う人もいるが、もしかしたら日本人の潜在能力を甘く見ているのかもしれない。

あるいは、日本を侵略したい国々も、日本が巨大な災害に見舞われて終わると考えるかもしれない。しかし実際はそうではなく真逆の結果になる。

日本は日本全土が焼け野原になっても、自然災害で甚大な被害を受けても、より強くなって蘇ってしまう。

叩きのめされても泥にまみれても日本は「次」がある。歴史を見ると、日本人はより強くなって復活する民族なのである。私は巨大な災害で日本が終わるとは思わない。苦心惨憺の中でも日本人はあきらめないのは歴史が証明しているからだ。

『警視庁災害対策課ツイッター 防災ヒント110(日本経済新聞出版社)』

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