グローバル経済とは「多国籍企業が利益を総取りする経済システム」だと気付け

グローバル経済とは「多国籍企業が利益を総取りする経済システム」だと気付け

グローバル経済とは「多国籍企業が利益を総取りする経済システム」のことである。グローバル経済が進めば進むほどより多国籍企業に有利な社会となり、株式資産を持つ者と持たざる者の格差は開いていく。この経済システムが動いている限り、何をしてももう縮まることはない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

グローバル経済とは多国籍企業が利益を総取りする経済システム

アメリカの多国籍企業が凄まじい利益を叩き出し、成長し、株主に大いなる恵みを与えてきたのは、その根底にグローバル経済があったからだ。

グローバル経済とは、多国籍企業のためのシステムである。「世界を見回して低賃金労働者を見つけて酷使し、全世界で製品を売りまくる」のを実現する経済システムをグローバル経済と呼ぶのだ。

莫大な利益を得たい多国籍企業は常に低賃金労働者を必要としている。固定費が減らせれば減らせるほど利益が莫大になる。だから、人件費は徹底的に削られる。

グローバル経済が進むと多国籍企業は国を越えて低賃金労働者を探す。そうすると、先進国の人々はリストラされたり、賃金を削減されたり、過重労働を強いられたりして、労働の対価はどんどん減る。

つまり、グローバル経済とは「多国籍企業が利益を総取りする経済システム」なのだ。このシステムが取り入れられた結果、多国籍企業の支配者である「大株主」が空前の資産を築き、格差の拡大が尋常ではないほど開いていった。

現代は多国籍企業が支配する株式「至上」主義だ。労働力だけで株式資産を持っていない人間は、もはや資本主義の中では奴隷的な状態に落とされるだけである。一方、大株主は何もしなくても資産が極限まで増えていく。

2020年から現在までの社会は、全世界が中国発新型コロナウイルスのパンデミックに翻弄された。

ところが、国際NGO団体『オックスファム』は、世界のトップ富豪10人がパンデミックの中で約56兆6000億円も資産を増加させていると報告している。何が起きたのか?

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グローバル化に対する猜疑と反発が世界各国で起こるようになった

各国政府がコロナ禍で落ち込む経済を下支えするために莫大な金融緩和を行った結果、大量の資金が株式市場に流れ込み、多国籍企業の株価を押し上げた。その結果としてこれらの企業の株式を大量に保有する「大株主」が空前の利益を得た。

言うまでもないが、トップ富豪10人富の源泉は、すべて「優良多国籍企業の株式資産」である。土地でも石油でも貴金属でもない。「株式資産」である。この株式資産が金融緩和によって価値が上昇し、最も豊かな人たちをさらに豊かにした。

グローバル化の中では、莫大な富を生み出す多国籍企業の株式をつかむということが、現代の資本主義で成功できるかどうかの境目だったのである。

この事実は、裏を返せば「グローバル経済=多国籍企業が利益を総取りする経済システム」が進めば進むほどより多国籍企業に有利な社会となり、株式資産を持つ者と持たざる者の格差は開いていくということを意味している。

裕福な資産家はその後も富を爆発的かつ累進的に膨らませていき、地球上の富の90%以上を掌握するようになっていく。経済格差は、この経済システムが動いている限り、何をしてももう縮まることはない。

しかし、世界を完全掌握するはずだったグローバル経済は、ここ数年できな臭い動きにさらされるようになっている。グローバル化に対する猜疑と反発が世界各国で起こるようになっているのだ。

多国籍企業に対する反撥が目立つようになったのは、2008年9月15日のリーマン・ショック以後からである。サブプライムローンに端を発した超巨大な信用収縮《クレジット・クランチ》は、放置していれば資本主義を崩壊させる可能性すらもあった。

そのため、政府は「大きすぎて潰せない」銀行群を次々と税金で救済していき、サブプライムローンに踊った自国の銀行を救済していった。それが人々の怒りを買い、グローバル化の大きな反撥を生み出した。

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多国籍企業が利益を総取りする経済システムはそのまま

当時のウォール街は壮大なギャンブル場だった。そこでは、世界最大の株式市場を舞台にして、投資家や銀行家たちが顧客の資金にレバレッジを賭けてトレードに明け暮れていた。

そして、「トレードでの儲けは自分のもの。トレードでの損は客のもの」と言いながら、リスクの高いトレードを繰り返して多額の報酬を手に入れていた。

その挙げ句に2008年9月15日に金融市場がすべてを巻き込んで壮大に破裂していくと、今度は政府にツケを払わせて自分たちはのうのうと生き延びたのである。

政府がウォール街の投資銀行を救済するために使った資金は、もちろん国民の税金である。この不条理に普通のアメリカ人は怒り心頭に発して、以後ウォール街は「国民の敵」と認識されるようになった。

しかしながら、「多国籍企業が利益を総取りする経済システム」はそのままだった。そのため、「1%」と呼ばれる一握りの資産家が富を独占し、「99%」と呼ばれるその他の層が取り残される構図は、株式『至上』主義の経済の中でより強化されるようになっている。

多国籍企業は自分たちだけが莫大な利益を得るグローバル化という経済システムを加速させて先進国の人々の賃金を削り、合理化によってリストラを恒常化させ、ワーキングプアを生み出す社会の構図が人々を追い詰めていた。

そのため、格差拡大がさらに鮮明に意識されるようになり、欧米では反グローバル化が草の根に広がっていくようになったのだ。

バラック・オバマ大統領はこうしたアメリカの底辺に広がる絶望を「チェンジ」するために選ばれた大統領だったが、この大統領は何もしなかった。バラック・オバマは失望され、人々は本当にアメリカの今の現状をチェンジしてくれる大統領を望んでいた。

そこに現れたのがドナルド・トランプだった。

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彼らは自分たちが利益を総取りする経済システムをより強化する

この荒々しい言動をする粗暴な大統領は異質だった。しかし、アメリカ人の半分がこのドナルド・トランプを支持したのはなぜか。それは、この男が「アメリカ第一=反グローバル経済」を謳っていたからだ。

「多国籍企業の富の源泉であるグローバル化を阻止し、雇用をアメリカに戻し、多国籍企業よりもアメリカの労働者を儲けさせる」と荒々しく宣言したのがこの男だったのだ。

当然、多国籍企業はビジネスの邪魔になるトランプ大統領を叩きつぶそうと激しい勢いで攻撃を仕掛けた。マスメディアもまた多国籍企業の一員である。マスメディアは連日のようにトランプ大統領の批判を繰り返して反トランプの世論を作り上げた。

トランプ大統領はそれに対して苛烈に戦った。マスメディアに巣食うグローバリスト・リベラル・フェミニストたちの批判に一歩も譲らなかったので、アメリカはこれによって右と左、保守とリベラルとに分断した。

しかし、これこそがアメリカ人の半分が望んでいたことだったのだ。99%は多国籍企業だけが暴利をむさぼる社会を是正し、何とか正常な社会に戻したかったのだ。

グローバル経済の浸透によって格差の下に転がり堕とされたアメリカ人が、ドナルド・トランプという「凶器」で、多国籍企業が利益を総取りする経済システムを破壊したかったのだ。

しかし、トランプ大統領は4年で葬られて、アメリカは再び「多国籍企業が利益を総取りする経済システム」が社会をコントロールするかつての世界に戻った。

現代社会の支配者は、紛れもなく多国籍企業である。彼らは自分たちが利益を総取りする経済システムをより強化していく。ということは、私たちはますます「働いて豊かになる」ことができない社会になっていくということでもある。

あなたは、それを理解しているだろうか?

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