政府・官僚は、新型コロナで追い詰められた国民全員を助けるつもりはない

政府・官僚は、新型コロナで追い詰められた国民全員を助けるつもりはない

日本経済は2019年10月の消費税引き上げによって新型コロナウイルスの問題の前から景況が悪化していた。そんな中で、新型コロナウイルスによって超弩級の経済的ダメージを食らった。自民党はこれを受けて緊急の経済対策を話し合っているのだが、『自己申告に基づいて生活に困っている世帯などに1世帯あたり10万円を超える現金を支給する方向』で調整を進めていると報道されたが……(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

想像を絶する景況悪化となって日本経済に激震

新型コロナウイルスによって、すべての組織、すべての個人は悪影響を受ける。もはや経営努力を超えた部分で企業は追い込まれてしまう。中小企業や小規模事業者は、ギリギリでやっているところが多いので、売上が半減したらすぐに資金調達に問題が発生する。

新型コロナウイルスが日本経済に深刻な悪影響をもたらし始めたのは2月からだが、景気悪化が一気に深まったのは3月からだ。

企業が売上を落として状況を自らの力で好転できないのであれば、次に起きるのは従業員の解雇・無給の自宅待機・雇い止め・請負の打ち切りなどである。最初に非正規雇用者やフリーランスが切られ、次に正社員が切られる。

それでも状況が好転しないと、次に起きるのは中小企業・小規模事業者の倒産だ。

全業種が同時に坂道を転がり落ちるのだから、新年度からの日本は未曾有の不景気と化す。これから来るのは「恐慌」と言っても過言ではない、想像を絶する景況悪化となって日本経済を激震させるはずだ。

そもそも、日本経済は2019年10月の消費税引き上げによって新型コロナウイルスの問題の前から景況が悪化していた。GDP成長率もマイナスに落ち込み、景気動向指数も10月から一気に悪化した。

そんな中で、新型コロナウイルスによって超弩級の経済的ダメージを食らったので、日本経済は私たちが思っている以上に傷が深い。

自民党はこれを受けて緊急の経済対策を話し合っているのだが、『自己申告に基づいて生活に困っている世帯などに1世帯あたり10万円を超える現金を支給する方向』で調整を進めていると報道された。

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「自己申告」による支給は誰もが受けられるわけではない

しかし、この経済対策は国民のすべてに届かない可能性が高い。なぜなら「自己申告」というのは政府官僚等の「上級市民」が考えているほど簡単ではないからだ。言って見れば、多くの人たちにとって敷居が高いのである。

ごく普通に暮らしている人にとってはどうか。一時的に苦しくなったら、すぐに「自己申告」しようと考えるだろうか。もしかしたら「苦しいけれども、自己申告して自分の苦境を知られるのは嫌だ」と考える層も多いはずだ。

「苦しいのを自己申告するのはプライドが許さない」という意識を持つ人もいるし、「自分が苦しいのは自分が至らないから。苦しくとも自分で何とかしよう」という意識を持つ人もいる。

あるいは「政府と言えども他人様。他人様には迷惑をかけたくない」という意識を持つ人もいるのは間違いない。

政府の10万円をもらうために「自己申告」するというのは、自分が苦しいということを外側にアピールすることなのである。日本人はそれを好まない国民性であるというのを政府官僚と言った上級市民は理解できているのだろうか。

それだけではない。

外出の難しい高齢層はどうだろう。彼らは「自己申告したら政府から10万円が支給される」と聞いても、「自己申告」するだけの体力や気力が追いつかない。結局、支援を受けずに困窮に極限まで耐えようと考えるのではないか。

これは生活保護の申請を見ても分かる。日本人の高齢層の中には明らかに生活保護を受ける資格があり、生活保護受給者よりも悲惨な生活をしているにも関わらず、極限の困窮を耐えている人が大勢いる。

そんな人たちが「自己申告」をするとは私には到底思えない。

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行政が常に自分たちの味方であると考えていない

それだけではない。非正規雇用者や失業者の中にはコミュニケーションを取るのが苦手な人が多い。

こうした人たちは、行政の窓口に行くということが大きな壁となるし、さらに「自己申告」して支援金をもらうという手続きをすることにも恐怖を感じる。

本当に自分が受ける資格があるのか、本当に行政を納得させられるのか、もしかしたら行政は自分を拒絶するのではないか……。

そうした不安や恐怖が高まると、「自己申告」して支援金をもらうということが想像以上の難事業に見えてくる。そして、申請する前から「もしかしたら跳ねられるかもしれないからやめておこう」という心理にもなっていく。

彼らがこのような不安を抱くのは、その根底に行政不信があるからでもある。彼らは行政が常に自分たちの味方であると考えているわけではない。

たとえば、非正規雇用者や失業者の中には、国民健康保険を払っていない人たちも大勢いる。もともと低賃金であるところにギリギリの生活をしているので払いたくても払えない人は多いのだ。

すると、行政はどうするのか。

「重要」「至急開封しろ」という支払い用紙の入った手紙を送りつけ、あるいは「督促状」という名の脅迫めいた手紙を送りつけ、さらに「払わないのであれば差し押さえる」と書かれた文言の手紙を送る。

確かに国民健康保険は国民の義務であり、それを支払わないのがそもそもの問題なのだが、低所得層の中には「払いたくても払えない」という人も多い。そんな中で「払わないなら無理やり差し押さえる」と恫喝の手紙を送りつけてくるのだから、それで行政に好感を持つのは難しい。

生活保護の申請に行って「あなたは働けるでしょう」とあれこれ理由を付けて追い払われた経験をした人もいるかもしれない。こうした経験をしていると、低所得層になればなるほど行政不信を募らせても不思議ではないのだ。

彼らが「自己申告」するだろうか。まさか。

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政府も官僚も国民全員を助けるつもりはない

『自己申告に基づいて生活に困っている世帯などに1世帯あたり10万円を超える現金を支給する方向』の原案は公明党が提出したものだ。

公明党がこの案を推してきたのは、実は多くの国民には「自己申告による支援金獲得」が敷居が高いということを分かっていてやったのかもしれない。

敷居が高ければ、どうなるのか。彼らは「自分たちの組織を通して申請すれば自分たちの支持層が増える」という戦略が取れる。つまり、「困窮者の自己申告を手伝って公明党支持者を増やす」ことが可能になる。

これは共産党にとっても有利だ。共産党は生活保護受給を支援することによって低所得層からの一定の支持を手に入れている。「自己申告」によっても同じ手法が使えることになる。

日本政府はなぜこの案を前向きに検討しているのか。それは「申請者が減れば国民にカネをばら撒く金額が減る」からではないのか。

実は国民全員を平等に救済する方法がある。それは減税である。たとえば、消費税をゼロにしたら、それだけで国民の所得を10%引き上げたも同然になる。すべての国民が恩恵を受ける。

しかし、日本政府や財務省は断固としてそれを拒否して検討すらしない。消費税は彼らにとっての利権である。利権を手放したくない。利権を手放すくらいなら、別に予算を組んでそちらで支払った方がいいという判断をする。

結局のところ、政府も官僚も国民にベストな方策を取るつもりはないということであり、国民全員を助けるつもりはないということでもある。

そんな中で、新型コロナウイルスは日本経済をズタズタに引き裂いていき、日本を破壊していこうとしている。

私たちは生き残ることができるだろうか?

『消費税が国を滅ぼす(富岡幸雄)』

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