とりあえず世界で最も売れているウェアラブルコンピュータを買って慣れておけ

とりあえず世界で最も売れているウェアラブルコンピュータを買って慣れておけ

DX(デジタルトランスフォーメーション)と言われても、普通の50代や60代の経営者の中には、何が起きているのかさっぱり分からない。DXが加速すればするほど、そこに踏み込める企業や人と、そうでない企業や人が鮮明に分かれていく。そして、このDXの向こう側に何があるのか?(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

Apple Watchひとつでスイス産の腕時計出荷数を抜く

ロレックスを愛用していた私の50代の知り合いが、最近になってApple Watch(アップル・ウォッチ)の最新型のものを身に付けていることに気づいた。

「息子がロレックスよりも絶対に良いというので買ったが、メールもメッセージも分かるしどれだけ歩いたかも分かるし、最初はオモチャだと思ったけれども今はもう手放せない。ロレックスとジャンルが違う。ロレックスは見栄だがこれは実用だ」

彼はそのような要旨のことを言った。時計と言えば見栄重視の高級時計しかしていなかった彼がApple Watchに転向するとは思わなかったが、こうした時代の流れを私は興味深く思った。

言うまでもなく、Apple Watchは世界で最も成功したウェアラブルコンピュータ(身につけるコンピュータ)である。すでに2019年の時点で、Apple Watchひとつでスイス産の腕時計出荷数を抜くほどの数を売り上げている。

ちなみに私もApple Watchを身につけているが、私はこのデバイスを「時計」だとは思っていない。まぎれもなくコンピュータであるという認識をしている。

この小さなデバイスで人々は時間やカレンダーを見ることができるのだが、他にもメールやSNSを確認することができるし、電話もすることができる。電車の駅の改札もこれで通ることもできるし、コンビニやキオスクで会計を済ますこともできる。

その上に、自分の身体の状況や運動の進捗や心臓の動きを知ることもできる。緊急時にはSOSを発することもできる。

実際に使ってみれば分かるが、Apple Watchは慣れれば慣れるほど良さが感じられるようになり、やがて手放せなくなる。

Appleの成功を真似て他の企業も似たような製品を出してAppleに追いつこうとしているが、今後はAppleとは違うイノベーションで成功するところも出てくるだろう。

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コンピュータを私たちの脳に直接埋め込むところにまで行き着く

スマートフォンの次には何が来るか。ウェアラブルコンピュータである。ヘッドホンとしての機能から進化している「AirPods」も、どんどん高度化して単なるヘッドホン以上のものになっていく。

さらにAppleはメガネ型のウェアラブルコンピュータ「Apple Glass」の開発に取り組んでいるというのだが、これはAR(拡張現実)をいかに実現するかという部分に主眼が置かれたものであると推測されている。

メガネのレンズ部分に様々な情報が表示されて、目の前のものを見ながら同時にコンピュータの画面やスマートフォンの画面を見ているような情報が表示されるようなものになるのではないか。

今、歩きながらスマートフォンの操作をして、前を見ないで歩いて事故に巻き込まれるような人たちが問題になっている。しかし、メガネのレンズに情報が常に表示されるようになったら、社会の光景は一変するだろう。

机上のコンピュータから、スマートフォンへ。スマートフォンから時計へ。さらに時計からメガネへ。コンピュータは、どんどん「身に付けるもの」になっている方向に時代が進化しているのを私たちは感じるはずだ。

最終的にはどうなるのだろうか。十数年後には、恐らくコンピュータを私たちの脳に直接埋め込むところにまで行き着く。こんな風に書けば、まるでSFのような話だがSFではない。

テスラ創業者のイーロン・マスクは「ニューラリンク」という企業を新しく立ち上げたのが2017年3月のことだった。この「ニューラリンク」という企業がそれを研究している。

この企業は何を目的とするのか。脳(ブレイン)に直接インターネットを接続させることによって、人間の知能部分をアップグレードする。イーロン・マスクはこれを「ブレインターネット」と呼んでいる。

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コロナ禍で一気にDX(デジタルトランスフォーメーション)化

基本的に「人間と情報を直結させる」という方向性は定まっており、すべてはインターネットに集約されることになる。

時計やヘッドホンやメガネのようなデバイスによって、インターネットに接続するウェアラブル・コンピュータが時代を変えていく流れはもう起きている。今後もウェアラブルの時代に向かってイノベーションが走っていくことになる。

つまり、インターネットはますます私たちの身体に密着し、直結する。

折しもコロナ禍によって人類は「ステイホーム」を余儀なくされ、そのためにリモートワークによる学習や仕事のやり方にどんどん変わっていき、時代は一気にデジタル最優先に変わった。

これは「DX(デジタルトランスフォーメーション)化した」という言い方をする。コロナ禍によって、ITを使いこなせている人間とそうでない人間の格差はさらに広がっていったということができる。

「DX」の時代ともなれば、当たり前だが基礎的なテクノロジーの知識が必須だ。スマートフォンが使え、パソコンが使え、ソフトウェアが使え、ネットワークについて必要最小限の知識があり、クラウドがきちんと理解できている必要がある。

自然とそうしたテクノロジーに馴染んだ「もともとハイテク志向の人」には分からないかもしれないが、まったく理解のないところから「DX」の流れに乗るというのは並大抵のことはない。

普通の50代や60代の経営者の中には、何が起きているのかさっぱり分からない世界でもある。

だから、DXが加速すればするほど、そこに踏み込める企業や人と、そうでない企業や人が鮮明に分かれて、使いこなせない人は淘汰されていくという世界が生まれてくる。このDXの向こう側にウェアラブルコンピュータがある。

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最初からこれに慣れた人間がアドバンテージを取ることができる

パソコンの時代になった時にパソコンを使えない人は淘汰され、インターネットの時代になったらインターネットが使えない人は淘汰され、スマートフォンの時代になったらスマートフォンが使えない人は淘汰された。

今後はDXが加速し、さらにウェアラブルの時代になっても同じことが起こり得る。

こうした時代についていくには、どうしてもテクノロジーのリテラシー(読解力)が欠かせない。インターネットはすでに文明のコアな部分に組み込まれており、それはすなわちテクノロジーが支配する世界になったということなのである。

超高度情報化社会の根幹を為すのはテクノロジーだ。ここに深いリテラシーがある人とない人の差は、そのまま情報格差となり、経済格差につながる。

だからこそ、私たちは自分の持てるすべての努力をテクノロジーのリテラシーに注ぎ込む必要がある。縦横無尽にテクノロジーを使いこなせる人間にならなければいけないし、テクノロジーに自分の才能や未来を賭けなければならない。

この社会で生き延びるのは、より深くテクノロジーを使いこなし、テクノロジーに適応していくことであるのは間違いない。

そこから外れた瞬間に淘汰される。そんな時代になってしまっている。これは、40代以降の「子供の頃にインターネットがなかった時代に生きていた人たち」が特に注意しなければならないことでもある。

環境に合わせて変化できる者が生き残る。テクノロジーが想像以上の濃度で支配する世界では、テクノロジーに適応できた人間「だけ」が利益を得る。インターネットを身体に密着し、直結させた者が生き残る。

時代を見誤るべきではない。来るべき時代の流れに淘汰されたくないのであれば、とりあえず世界で最も売れているウェアラブルコンピュータ「Apple Watch」くらいは買って、その世界に慣れてみればどうだろうか。

これからウェアラブルコンピュータはさらに進化する。そうすると、最初からこれに慣れた人間がアドバンテージを取ることができる。

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