人工知能はすでにチェスや囲碁や将棋等のゲームの世界で人間を完膚なまでに叩きのめしているのだが、これは単なる余興のようなものでしかない。
人工知能が人間社会で人間よりも上位に立つ「予兆」であり、本番はこれからだ。
人工知能は膨大なデータを分析・解析して正しい答えを導き出したり、的確な成果物を生み出したり、コミュニケーションしたり、仕事を完遂させたりする。
そのため、ほとんどの仕事は不必要になる時代がやってくる。残る仕事もまた人工知能によって仕事の方法が変わる。
深い知識と専門性が必要な分野でも、専門家に判断させるよりも人工知能に判断させた方が的確で能力も高いので、専門家も要らなくなっていく。
「判断」は経営者がディープ・ラーニングに裏打ちされた人工知能を使って行うので、部長・課長等の上司の仕事もなくなっていく。
事務系の仕事も人間が必要なくなっていくので、サラリーマンのやっている仕事の多くも人工知能が浸透して消えていくことになる。
人工知能は「仕事を喪失させる社会現象」である
すでに新聞社では株式速報や決算記事やスポーツの勝敗報告などの記事は「人工知能」が書いているというのはよく知られている。そのため、記者・ライターはどんどん切り捨てられていくようになっている。
今後は投資銀行もディーリングを人工知能に任せ、投資信託の購入相談も受け付け対応も人工知能が引き受けるようになっているので、こうした仕事に就いている人間も一掃されつつある。
人工知能は前倒しで取り入れられるようになっているのだが、そこで起きているのは、やはりというべきか「人減らし」に他ならなかった。
仕事は消えるのである。
人工知能によって数百種類もの職業が消えると言われている。その時になって転職しようと思っても、あらゆる分野で仕事が消えているので失職したままになる可能性も高い。
ありとあらゆるものが人工知能に取って変わると、その傾向はますます強いものになっていく。
本格的に人工知能が社会に浸透していくのは2020年頃からだと言われているので、それ以後の社会は今まで私たちが知っているのとはまったく違う社会になっていく確率が相当高い。
今ではまだ誰もが他人事のように見ているが、これから人工知能が浸透するに従って、急激に立場が危うくなってしまう人が激増する。
グローバル化によって中国等から安い品物が大量に日本に流れ込んで、「100円ショップ」等が席巻したとき、日本人は「安い商品が買えるようになって嬉しい」と単純に喜んでいた。
しかし、安い商品が大量に入り込んでいくということは、世界から見て高い自分たちの給料が安い方に引き下げられていくという仕組みに気付いた人はほとんどいなかった。
100円ショップでモノを買って喜んでいたら、自分たちの首が絞まっていくのがグローバル化の正体だった。(100円ショップでの安物買いが、人生を破綻させる5つの理由)
グローバル化は「賃金を引き下げる社会現象」だった。これから来る人工知能は「仕事を喪失させる社会現象」であることに気付いている人は、どれだけいるだろうか。
人工知能はインターネットを超える変革になる
2000年代に入ってから日本企業のグローバル化も急激に進んでいったのだが、それと共に日本独自の年功序列も終身雇用も崩れていった。
100円ショップで「安いモノが買えた」と喜んでいた人は、ついに100円ショップでしかモノを買えない人になっていったというのが日本のグローバル化の結末だった。彼らは気が付かなかったのだ。
社会がこれから大きく変革するのに気付かないというのは珍しくない。
インターネットもそうだった。
1990年代、インターネットが拡散していくとき、「これは自分の仕事を変えてしまう恐るべき技術だ」と考えた人がいる一方で、「こんなものが自分の職場を変えるとは思えない」と考える人も多かった。
たとえば、音楽業界・出版業界・報道界・小売業界の多くの経営者や従業員はそうだった。音楽業界は相変わらず人々がCDを買うと思い込んでいたし、出版業界は紙の本が売れなくなることはないと信じ込んでいた。
報道界は記者が書いて紙に印刷したものが情報だと思い込んでいたし、小売業界の人は人々は店で商品を見て買うのが普通でインターネットで買わないと想像していた。
しかし、間違っていた。すべての業界はインターネットに取って食われるようになっていった。
2000年代の後半からスマートフォンの時代に入ると、人々のインターネット依存は急激に深まり、インターネット側に立ち位置を変えられなかった企業の多くは淘汰されていく流れに入った。
人工知能では同じことが起こり得る。
社会の変革で言えば、人工知能はインターネットを超える凄まじい社会変革のイノベーションとなる。
自分の仕事は人工知能の時代でも生き残れるか?
グローバル化の時代で起きたこと、インターネット化の時代で起きたことは、人工知能の時代になっても繰り返されていく。
グローバル化やインターネット化で起きたのは雇用の削減である。職場に20人いたら、これらの波が浸透するに従って人が減っていった。
20人は15人になり5人がリストラされる。15人が10人になり5人がリストラされる。10人が5人になり再び5人がリストラされる……。
じわじわと、しかし確実に人員削減が為されていく。
社会のすべてでそれが起きるので雇用が縮小していき、いったんリストラされたら次は雇われにくいという現象が発生する。そのため、リストラされるたびに低い賃金でやむなく働くしかなくなるので貧困は拡大していく。
グローバル化とインターネット化で起きたこれらの流れは、大きな格差社会を生み出したのだが、人工知能の時代はそれがより鮮明に、かつ大規模になっていくのは避けられない。
何しろ、人工知能は「正しい答えを導き出したり、的確な成果物を生み出したり、コミュニケーションしたり、仕事を完遂させたりする」のだ。
今までのイノベーションとはレベルがひとつもふたつも違うと言っても過言ではない。
多くの人は人工知能に駆逐される側になってしまうのだが、いったん駆逐されてしまうと二度と仕事が見付からないような最悪の事態に陥ってしまうはずだ。
このような未来はグローバル化やインターネット化で起きたことを見れば容易に予測できる。しかし、多くの人はまったく何も気付かないまま人工知能の時代を迎え入れる。
そして、自分が人工知能に駆逐されてから「実は人工知能は雇用を喪失させるイノベーションだったのだ」と気付いて蒼白になる。
100円ショップが社会に蔓延しても自分の賃金が引き下げられるということに気付かなかった人が人工知能の猛威で雇用が消えると気付かないのは仕方がないのかもしれない。
しかし、あなたは知っておくべきだ。
人工知能に駆逐される側にいたら次の時代は生き残れない。今のうちに自分の立ち位置が人工知能の時代でも生き残れるか、よく考えておくべき時期にきている。