弱肉強食の資本主義を変えられなければ、より過激な人間が出てくることになる

弱肉強食の資本主義を変えられなければ、より過激な人間が出てくることになる

アメリカの有権者の半分は現在の「弱肉強食の資本主義」に激しい不満と敵意を抱いており、資本主義の根幹にあるグローバリズムには痛めつけられ続けている。それがバーニー・サンダースを躍進させ、アメリカに民主社会主義者という共産主義思想が広がっている下地になっている。そこにあるのは「怒り」だ。その怒りが、2016年から今も継続して続いているというのが分かったのが、2020年2月のアイオワ州の選挙結果であったとも言える。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

バーニー・サンダースが浮き彫りにしているもの

アメリカは今年、大統領選挙があるのだが野党である民主党の候補指名争いで、中西部アイオワ州党員集会が、最終結果が確定しない異例の事態で紛糾している。バーニー・サンダース氏とピート・ブティジェッジ氏が微妙なまでの接戦だったのである。

どちらも勝利宣言を出しているのだが、0.1%程度の差で、わずかにピート・ブティジェッジ氏が勝利しているのではないかとも言われている。

ピート・ブティジェッジ氏は民主党の中でも中道の政策を主張しているのだが、バーニー・サンダース氏は民主党の中でも過激な「極左」の意見を主張している人である。

ちなみマスコミは急進右派のことを「極右」と言うくせに、極左のことを「急進左派」みたいな言い方をするのだが、分かりやすくはっきりと言うべきだ。バーニー・サンダースは「極左」なのである。

2016年の大統領選挙の時も、バーニー・サンダースは若者の圧倒的な支持をバッグに、ヒラリー・クリントンを追い抜くような旋風を巻き起こしていたが、その当時のバーニー・サンダースは74歳だった。

現在は78歳だが、民主党の候補指名争いで最も重要なアイオワ州を制してしまいかねないほどの勢いでバーニー・サンダースが伸びているというのはアメリカの「病(やまい)」を浮き彫りにしているようにも見える。

若者がバーニー・サンダースを支持しているというのは、つまるところアメリカの若者はもう現代の資本主義を支持していないということを意味している。

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「現代の資本主義」を支持しなくなっている

バーニー・サンダースが圧倒的勝利を得られないで接戦になったのは、彼の主張が古びたからではなく、78歳という高齢や健康不安がくすぶっているからである。若くて健康不安がなければ、圧勝していた可能性もあった。

バーニー・サンダースは「民主社会主義者」と自分を定義している。主張は明確だ。

「高等教育の無償化」「最低賃金の引き上げ」「大学の授業料の帳消し」「米国皆保険実現」「処方薬の価格抑制」「クレジットカードの融資金利を15%に制限」「累進課税制度の導入」「価格を抑えた住宅の供給」「女性の権利の向上」「環境保護」「エネルギーを100%風力発電と太陽光発電化」……。

この政策をひとことで言うと「政府が富裕層と大企業から税金を取って貧困層に配る」というものである。実のところ、目新しいものではない。昔から共産主義者や社会主義者が主張している内容である。

興味深いのは、資本主義経済の総本山であるアメリカで、こうした社会主義思想が広がり、支持され、特に若者たちの支持を得ていることだ。

2019年のデータによると、若年層の60%から70%は「社会主義的な政策を訴える候補者に投票する」と言っており、実際にバーニー・サンダースやアレクサンドリア・オカシオ=コルテスのような極左議員を支持している。

アメリカは、若年層になればなるほど「現代の資本主義」を支持しなくなっているのである。

その理由は明らかだ。

すでに現代の資本主義は「弱肉強食の資本主義」と化している。そして、アメリカの多国籍企業は凄まじいまでの富で膨れ上がって、その大株主たちが地球上の富を独占するのではないかというほどの資産を膨らませている。

一方で、株式を持たない普通の市民はその資本主義の恩恵はまったく何もない。その格差はもはや一生懸命に働くとか、努力するとかのレベルでは埋めがたいものになっているのが現代の資本主義の姿となった。

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「弱肉強食の資本主義」に激しい不満と敵意

アメリカの若者たちは、その社会構造に大きな不満を持ち「ぶち壊したい」と思っている。その「ぶち壊し役」としてバーニー・サンダースと民主社会主義は期待されているのだ。

2016年のアメリカ大統領選挙で、大本命だったはずのヒラリー・クリントンが大統領になれなかった理由もここにある。

ヒラリー・クリントンはあまりにも体制側であって、現在の資本主義で恩恵を受けている人間でありすぎた。

ヒラリーはどう見てもエスタブリッシュメント(支配者階級)であり、この政治家に任せてもアメリカが変わるとはアメリカ国民は思わなかったのだ。

2016年にバーニー・サンダースが予想外の健闘を見せ、ドナルド・トランプが番狂わせの大統領になったのは、どちらも「現在の資本主義をぶち壊してくれそうだ」という期待感があったからである。

アメリカの有権者の半分は現在の「弱肉強食の資本主義」に激しい不満と敵意を抱いており、資本主義の根幹にあるグローバリズムには痛めつけられ続けている。

それがバーニー・サンダースを躍進させ、アメリカに民主社会主義者という共産主義思想が広がっている下地になっている。そこにあるのは「怒り」だ。その怒りが、2016年から今も継続して続いているというのが分かったのが、2020年2月のアイオワ州の選挙結果であったとも言える。

もちろん、バーニー・サンダースはあまりにも高齢である上に、他の民主党員と折り合いも悪いので、民主党の大統領候補になるとは思えない。仮に大統領候補に選ばれてもドナルド・トランプに勝てるとも思えない。

重要なのはその部分ではなく、バーニー・サンダースを支持したいと思うほど、今の資本主義に怒りを抱いている人たちがいるという部分である。

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弱肉強食の資本主義を変えられなければどうなるのか?

資本主義は今も昔も勝者と敗者を明確に分かるシステムである。そのため、勝者はいつでも莫大な富を保持してきた。

しかし、多くの人々は自分たちがほどほどに暮らせれば別に勝者がどのような豪勢な暮らしをしようが関心はなかった。

富裕層やセレブたちの豪華絢爛で派手なライフスタイルは常に可視化されているのだが、人々は「あれは自分たちとは別世界」として見つめている。別世界である以上、富裕層が何をしようがほとんどの人々は関係がない話だった。

人々が怒っているのは、そこではない。

今の弱肉強食の資本主義は、自分たちが「ほどほどの暮らし」すらもできないほど苛烈なものになっていることに怒っているのだ。

大企業と富裕層がどこまでも利益を追求するために、必然的に中間層が底辺に突き落とされ、いったん貧困に落ちたら這い上がれなくなっている。別世界の人間たちが自分たちから搾取して、派手なライフスタイルを維持していると感じるようになっている。

だから、人々は「怒り」を持って社会を見つめ、金持ちたちを見つめるようになっているのだ。

社会に怒りが充満すると、現在の社会システムを破壊するための「何か」を人々は求めるようになる。それは「社会主義」かもしれないし「民族主義」かもしれないし「独裁主義」かもしれないし「全体主義」かもしれない。

アメリカはひとまず「アメリカ第一」を標榜する保護主義者であるドナルド・トランプで現状打破を成し遂げている最中なのだが、2020年の大統領戦を経てアメリカと世界がどのように変わっていくのかは注目に値する。

弱肉強食の資本主義を変えられなければ、より過激な人間が出てくるのは必至の情勢である。

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