自粛の解禁を。日本人はもっと自分たちの民度を信じていいのではないか?

自粛の解禁を。日本人はもっと自分たちの民度を信じていいのではないか?

きちんとマスクをする、消毒をする、社会的距離を取る、テレワークをする、ネットワーク中心に生活環境を変える、休日はなるべく家にいる……などは新しい常識として定着させる必要がある。また、感染予防につながるイノベーションを加速させる必要がある。感染を減らすための最大限の防御はすべての人が努力しなければならない。それをした上で、自粛の解禁をすべきではないのか。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

「経済的に死ぬ国民が増える」という別の側面

中国発コロナウイルスの蔓延は世界を一気に変えてしまった。すでに新型コロナウイルスは全世界の経済を破壊してしまった。私自身は2月の時点では「数ヶ月後に何とか治療薬ができて通常経済に戻ることができる」と思った。

だから「4月末あたりまでは何とか自粛して治療薬を待った方が良い」という考え方を持っていた。

現実はどうだったか。今、治療薬としてきちんと使えるのはギリアド・サイエンシズのレムデシビルくらいしかないのだが、これにしても「患者の回復を31%ほど早くする」くらいの効果がなく、コロナの特効薬というには程遠い。万能ではない。

ワクチンの方は多くの企業が開発を急いでいるのだが、今の状況だとそれなりに効くワクチンが開発されたとしても本格的に出回るのは来年以後の話である。場合によっては2年後かもしれない。私たちは特効薬や治療薬を待ち望んでいるのだが、現状はなかなかうまくいっていない。

そのため、私は「自粛して治療薬を待った方が良い」という考え方を4月中旬あたりに捨てた。特効薬や治療薬が出てこないのであれば、いくら自粛しても、経済活動を再開したら間違いなくまた感染者と死者が増えるのは間違いないからだ。

自粛すればするほど、困窮死する人の方が逆に増えて状況は悪化する。緊急事態宣言で経済はズタズタになっているのだが、安倍政権をこれを5月末まで延長した。感染者と死者を減らすという意味でそれは意味がないわけではない。

しかし、それは「経済的に死ぬ国民が増える」という別の側面を受け入れたということでもある。

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自粛を続けているとコロナで死ななくても経済で死ぬ

「自粛を継続したら感染者と死者は減るが、経済的は死ぬ」
「自粛を解除したら経済は回るが、感染者と死者は増える」

もし、ワクチンや効果的な治療薬が数ヶ月内に出てくるというのであれば、自粛を継続してそれを待つというのは正解だ。

しかし、薬が出てこないというのであればどうか。自粛すればするほど企業が死に、国民が死に、政府や行政の救済能力に限界が来て、最終的には社会が崩壊する確率が高まる。

そうであれば、私たちは「感染者と死者は増えるが、それでも最大限の防御をしながら経済を回す」方を選ぶのが現実的だと思わないだろうか。いつまでも自粛・休業・ステイホームを続けていたら私たちは食べていけなくなる。

実際、多くの企業が資金繰りに追い込まれており、世界中で企業の倒産、個人の失業が相次いでいる。日本も緊急事態宣言を5月末まで延長したのだから、今後はよりひどいことになっていく。

実際問題として、中小企業・小規模事業者・個人事業主・フリーランスの多くは仕事を失っていて、コロナに感染して死ぬ以前に、仕事がなくなって食べていけなくなって死ぬ危険にさらされている。

倒産・廃業する企業は続出し、失業者も莫大に増える。さらに失職はしていなくても、賃金・ボーナスの引き下げで経済苦に直面する従業員も増える。自粛が長引けば長引くほど、経済的な死に追いやられる人たちでいっぱいになる。

自粛・休業・ステイホームをいつまでもやっていたら、コロナで死ななくても経済で死ぬことになるのである。

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経済を再開してもコロナ以前には戻れない

何か奇跡でも起こらない限り、劇的に効くワクチンや効果的な治療薬が今年中に出てくる見込みがない。そうであれば、1ヶ月や2ヶ月くらい自粛しても、それを解除したら再び感染者と死者は増えることになる。

数ヶ月自粛したら、ワクチンや効果的な治療薬で感染者と死者を減らせるというのであれば自粛も意味があるかもしれない。しかし、そうでないのであれば、感染拡大の第二波、第三波は「止めることができない」のが現実だ。

仮に日本が徹底的かつ長期的に緊急事態宣言による自粛をして、コロナの感染者と死者を劇的に減らすことに成功したとする。

しかし、世界でコロナ感染者が相変わらず抑え切れていないのであれば、緊急事態宣言を解除した瞬間にまた日本で感染者と死者が増えていく。

だとしたら、さっさと決断した方がいい。自粛・休業・ステイホームから「最大限の防御をしつつ経済再開」をしてコロナと共存しつつ生きるしかない。いくらそれを批判しても、最終的にはそれを選択せざるを得ないのだから、それであれば早ければ早いほど良い。

もちろん、経済を再開してもコロナ以前には戻れない。それは受け入れなければならない。

きちんとマスクをする、消毒をする、社会的距離を取る、テレワークをする、ネットワーク中心に生活環境を変える、休日はなるべく家にいる……などは新しい常識として定着させる必要がある。

また、感染予防につながるイノベーションを加速させる必要がある。感染を減らすための最大限の防御はすべての人が努力しなければならない。

それをした上で、自粛の解禁をすべきではないのか。

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感染者と死者が減っても破綻者と自殺者が増える

欧米で「最大限の防御をしつつ経済再開」と言っても、うまくいかないかもしれない。欧米人はマスクをしたがらないし、握手やハグや挨拶のキスのような濃厚接触の文化があるし、人と人の触れ合う機会が非常に多い。

しかも、いろんな意味でアバウトな人も多いので、「最大限の防御」がなかなか徹底できない。そのため、欧米で「最大限の防御をしつつ経済再開」の選択は、致命的な大惨事につながる可能性がある。

日本はどうなのだろうか……。

日本人はきちんとマスクをする人が大半だし、アルコールで手を消毒したり、濃厚接触を減らす努力もちゃんとしている。

企業も感染を減らすために、あらゆる努力を惜しまないし、感染を避けるためのいろんなアイデアやソリューションを考え出している。

企業も個人も誰に命令されるわけでもなく、きちんと努力している。政治が右往左往して何の役に立たなくても、国民と企業は着々と対応を進めている。そして、常識と良識を持って行動している。

確かに非常識な行動をする人間もいるのだが、それ以上に常識と良識を持った人間が多い。だから、間違った決断ばかりしている政治家や、役に立たないゴミ情報をまき散らしているマスコミがいても、日本は何とかひどいことにならないで済んでいる。

日本人は「最大限の防御」という命題を与えられたら個人も企業もそれに沿って最大限の効果を生み出せる気質や民度がある。日本人は、もっと自分たちを信じていいのではないかと私は個人的に思っている。

『アメリカが畏怖した日本 真実の日米関係史(渡部 昇一)』

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