『私の身に起きたこと〜とあるウイグル人女性の証言〜(清水ともみ)』を読んで

『私の身に起きたこと〜とあるウイグル人女性の証言〜(清水ともみ)』を読んで

このマンガ『私の身に起きたこと〜とあるウイグル人女性の証言〜』は、若年層や女性たちにこそ読んで欲しいと思う。彼らのほとんどは政治には関心がない。残酷な現実にも関心がない。中国やウイグルのことも関心がない。その結果、中国共産党政権の体質がどういうものなのかを知ることもない。しかし、このマンガを読めば誰もが衝撃を受けるはずだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

ウイグルを「抹殺」していく中国

中国で起きているウイグル人の弾圧は、マスコミも腰が引けてほとんど報道されることはない。

また、日本の人権団体もあれだけ「人権、人権、人権」とわめき叫んでいるのに、とても奇妙なことに、ウイグル人の弾圧に対して中国や習近平を徹底的に糾弾することは決してない。

日本だけではない。欧米の人権団体も腰が引けている。今、ウイグルでは「現在進行形のアウシュビッツ」が起こっているというのに、この言語道断の民族抹殺・文化抹殺を放置し続けているのである。

中国共産党政権に楯突いたら「報復される、攻撃される、嫌がらせされる」という恐怖があったり、「面倒なところには関わらないでおこう」という保身があったり、そもそも人権団体やリベラルの組織の中には中国共産党政権の人間が紛れ込んでいて、それを取り上げさせまいとしていることもある。

日頃から「民主主義」だの「人権主義」だの偉そうなことを言っている欧米の各国政府もほとんど何も言わない。

中国を批判したら「内政干渉するな!」と激しく恫喝され、あげくの果てに「お前たちの国に中国市場を開放しない」とか「流通をシャットダウンする」とか攻撃されるからだ。

そもそも、多くの政治家は中国のワイロやハニートラップにどっぷりハマっていて、中国共産党政権に楯突けるような骨のある政治家はほとんどいない。

トランプ大統領が脇目も振らずに中国を叩けるのは、トランプ大統領自身がビジネスマンで中国のワイロやハニートラップなどまったく必要なかったということもある。

ジョー・バイデンは中国のワイロにどっぷりなので、次期大統領がバイデンに決まったら、アメリカはまたウイグルに対して何も言わなくなってしまうだろう。そして、中国共産党政権は、着々とウイグルを「抹殺」していくだろう。

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描かれている内容の恐ろしさ

ウイグルで起きている史上最悪の人権侵害、残酷きわまりない民族抹殺は、残念ながら多くの日本人には「他人事」だ。ほとんど関心を寄せない。

それは、ウイグルが行ったことも見たこともない遠い遠い地域(エリア)であることや、ウイグル人がイスラム教徒でますます日本人と関係がないことや、日本で活躍しているウイグル人もほとんどいないことや、マスコミがまったく取り上げないことのすべてが要因として挙げられる。

「現在進行形のアウシュビッツ」とも言われる、目を覆いたくなるような残酷な出来事が進行しているのに、誰もが無関心のままなのである。言ってみれば、多くの日本人は「ウイグルに関心を持つ手がかり」を持たされていないという状況である。

「こういう状況が何とか打破されればいいのだが」と私はずっと思っていたのだが、現状を打破して日本人に「ウイグル」への関心を喚起するひとつの試みがあった。

マンガである。

多くの日本人はマンガが大好きで、それはもはや日本の「文化」であるとも言える。日本人は文章よりもマンガを読むのである。

清水ともみ氏の『私の身に起きたこと〜とあるウイグル人女性の証言〜』というマンガは、ウイグルで何が起きているのかを女性特有の柔らかいタッチで描いているとても重要なマンガだ。

ウイグルで起こっている残酷きわまりない出来事を、ミフリグル・トゥルソンというひとりの女性の証言を元にして描き起こしている。

清水ともみ氏のマンガはタッチが柔らかく、ひとこまひとこまが腑に落ちるように進んでいく。しかし、そこで描かれている内容は決してほのぼのしたものではない。とてもハードで恐ろしいものだ。

シンプルで誰もが受け入れられる描写だからこそ、逆に描かれている内容の恐ろしさが身に迫ってくる。

犯罪を犯したことのない、ごく普通の生活を送っているウイグルの女性が何の理由もなく拘束され、生後45日の三つ子も一緒につれて行かれ、引き離され、執拗に拷問を受け、子供のひとりの亡骸を渡される「現実」が描かれる。

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若年層や女性たちに読んで欲しい

このマンガ『私の身に起きたこと〜とあるウイグル人女性の証言〜』は、若年層や女性たちにこそ読んで欲しいと思う。

彼らのほとんどは政治には関心がない。残酷な現実にも関心がない。中国やウイグルのことも関心がない。その結果、中国共産党政権の体質がどういうものなのかを知ることもない。

しかし、このマンガを読めば誰もが衝撃を受けるはずだ。なぜ、ウイグルの罪のない女性がこんな運命を辿ることになってしまうのか、どうして中国共産党政権はこんなことをしているのか、何が起きているのか……と恐怖を覚えるはずだ。

中国という国が、チベットを弾圧していたとか、香港の自治と自由を奪ってしまったとか、そういった「断片知識」は恐らくニュースで見聞きしているはずなので、そうした断片知識とウイグルで起きていることが、リンクし、そしてひとつの結論が見えてくるはずだ。

「中国はあちこちの地域を侵略しているのだ……」
「侵略したら民族を抹殺してしまうのだ……」
「侵略されたら文化も踏みにじられるのだ……」

そうした現実が、このマンガを読むことによって今まで中国やウイグルにまったく興味がない若年層や女性たちにも「肌感覚」で思い知ることができる。このマンガは、そういうマンガである。

決して長いマンガではない。誰もがスキマ時間に読める。しかし、何気なく読んだとしても、読み終わったら「ウイグルの弾圧」という今まで他人事だったテーマが、急に身近なものになっていくはずだ。

このマンガの最後には、ミフリグル・トゥルソンさんのメッセージがある。誰もが、この現実を知らしめるべきだと思うはずだ。そして、思慮ある人は、ふとこのようにも思うはずだ。

「ちょっと待ってよ。もし日本が中国に侵略されたらどうなろうのだろう?」

中国は虎視眈々と日本にも侵略の手を伸ばしているのは、尖閣諸島問題や、北海道の土地の買い占めや、中国人の大量流入や、団地の中国化や、政治・経済・報道の奇妙なまでの媚中姿勢によって誰もが気づくはずだ。

日本が侵略されたらどうなるのか。日本人の運命もウイグル人のようになってしまうのである。そこまで含めて、このマンガを読むべきだ。ひとりでも多くの人たちに、特に中国やウイグルに何の関心もない人たちに、このマンガを読んで欲しいと心から思っている。

『私の身に起きたこと〜とあるウイグル人女性の証言〜(清水ともみ)』

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