国民の情報を管理できない日本年金機構の惨めな姿と、その背景にある高齢化の毒

国民の情報を管理できない日本年金機構の惨めな姿と、その背景にある高齢化の毒

懸念すべきは日本年金機構だけではない。どこの省庁もハンコは未だに現役だし、議員も官公庁もいまだにファクスで情報をやり取りして、それを廃止すると言ったら大抗議が来て撤回せざるを得なかったという馬鹿げた動きを見ても分かる。いちいち、前近代的なのである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

高齢者をターゲットにした詐欺も愛知県では続出

気になることがある。「日本年金機構が愛知県などの年金受給者約97万2000人に対し、誤って別人の年金支払額などを記載した振込通知書を発送していた」という言語道断のミスである。

別人の年金番号や振込先が記されているのだから、もらった方も驚くだろうが、セキュリティの漏洩にもなる。

100人、200人でも問題だと言うのに、約97万2000人というのだから「前人未到のミス」と言っても過言ではないのではないか。誤送付は愛知・三重・福岡の3県ということなのだが、愛知県だけで約80万人ということだ。

愛知県と言えば、実は多文化共生で外国人が大量に入って来ているエリアであり、高齢者をターゲットにした詐欺も愛知県では続出している。

2021年10月も22歳のブラジル人が91歳の女性からキャッシュカードを盗もうとした窃盗未遂の疑いで逮捕されているのだが、他にも中国人やベトナム人などがあらゆる詐欺口実で認知の落ちた高齢者から金を奪おうと暗躍している。

「デパートであなたのクレジットカードが不正に使われた。受け取りにいく」
「銀行であなたのキャッシュカードが不正に使われた。受け取りにいく」

高齢者に電話し、このような言い方でどんどん金を騙し取っていくのだ。

特殊詐欺のすべてに外国人が絡んでいるわけではないが、かなりの確率で外国人が含まれている。愛知県では、その被害が総額10億円になっているわけで、いかに高齢者がターゲットにされているのか分かるはずだ。

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政府は現代のデジタル至上主義となった社会についていけない

高齢者をターゲットにした詐欺が続出する愛知県。そこに、日本年金機構が愛知県に約80万人の誤送付が重なっているのだから最悪である。

これからは「日本年金機構の誤送付の関係で、あなたの年金を不正受給しようとした人がいる。あなたの年金受け取り口座の銀行のキャッシュカードを検査したい」と言って、キャッシュカードを奪う詐欺が横行するのは目に見えている。

そういう詐欺が横行したら、もう紛れもなく日本年金機構の責任である。

日本年金機構と言えば、その前身だった社会保険庁が杜撰な体制で約5100万件の年金記録漏れが発覚して「消えた年金問題」として大騒ぎになり、これが引き金になって社会保険庁が吹き飛んで日本年金機構が誕生したという経緯がある。

ところが、日本年金機構になっても相変わらずデータの管理がきちんとされていない。2018年には年金受給者のデータ入力業務を委託した会社が中国の会社にデータ入力を再委託していたという問題もあった。

よりによって中国である。日本年金機構の管理体制はどうなっているのかという話だ。今回もまた委託した企業が問題を起こしているのだが、まったく管理体制がなっていないのだ。まさに体質と言っても過言ではない。

国民の重大な情報を扱っているというのに、委託先さえも管理できない。かと言って、日本年金機構の内部で処理する能力もない。

世の中はすでに高度情報化社会になっているのだが、今の日本政府は高度情報化社会にも関わらず大量情報を扱う能力が欠如しているのではないかという重大な疑念が国民の間に湧き上がっている。

日本年金機構もそれを直轄する厚生労働省も恒常的な人手不足で運営が瀬戸際にまで来ているという噂もあるのだが、それ以前に「もしかしたら政府は現代のデジタル至上主義となった社会についていけないのではないか」という根源的な問題があるように見える。

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 DX(デジタル・トランスフォーメーション)化

しかし、懸念すべきは日本年金機構だけではない。

どこの省庁もハンコは未だに現役だし、議員も官公庁もいまだにファクスで情報をやり取りして、それを廃止すると言ったら大抗議が来て撤回せざるを得なかったという馬鹿げた動きを見ても分かる。いちいち、前近代的なのである。

省庁と言えば国家の機密情報、国民の個人情報を扱う「情報の総本山」なのだが、そこが昭和で進化が止まっているのだからまったく話にならない。

デジタル庁は2021年9月1日に設置されたばかりだが、本当のことを言えばデジタル庁は10年以上も前に設置しておかなければならなかったものだ。何をモタモタしているのか……。

令和になった今もハンコとファクスで生きているような化石機関が日本の省庁であり、議会であるとするならば、今の「超」高度情報化社会で日本が遅れを取ることになったとしても何ら不思議なことではないように見える。

中央がDX(デジタル・トランスフォーメーション)化できないのだから、末端がDX化と言っても無理に決まっている。

多くの日本人はこうした最先端への遅れを軽く見ているが、そうやって出遅れているうちに、他の国にどんどん抜かれていき、日本は技術大国としての地位も、経済大国としての地位もすべて失って先進国から脱落となっていくだろう。

折しも、みずほ銀行が何度もシステム障害を引き起こしてすっかり預金者の信用を失ってしまっている。これも、日本が「超」高度情報化社会に対応できるシステム化を進める技能を失っている象徴にも見える。

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「高齢化」が日本をどんどん時代遅れにしてしまっている

日本が技術に邁進する姿勢を失ったのは、もうトップが高齢者ばかり、人口も高齢者ばかりで、技術に知能が追いつかなくなってしまっているからではないか。

これだけインターネット・ファーストの世の中になっているのに、未だにハンコだのファクスだの昭和の化石が現役なのも、トップが高齢者で時代を把握できていないからではないのか。

農業や漁業のような産業でもイノベーションを進めるのではなく、途上国の外国人を連れて来て低賃金・悪条件で働かせる流れになっているのも、従事者が高齢者ばかりで「新しいことは分からないから」ではないのか。

経団連もイノベーションありきではなく、「留学生・技能実習生・単純労働者・インバウンド」という隠れ移民政策で安い人材を入れて仕事を回そうという発想しかないのも、経団連のメンバーが高齢者ばかりでDX(デジタル・トランスフォーメーション)が「よく分からないから」ではないのか。

政府が日本の振興のために「観光立国」を勝手に目指しているのも、国会議員のほとんどが「DXの生み出す未来」がどういうものなのかさっぱり見えていないからではないのか。

日本の高齢者は今も紙の紙幣と硬貨で買い物をしているのだが、これもフィンテックの新しい波がまったく理解できずに取り残されているからである。

結局、少子高齢化の「高齢化」の部分が日本をどんどん時代遅れにしてしまっていて、それが技術の遅れの要因となってしまっており、日本年金機構だとか官公庁の旧式システムだとか、社会全体のDX化の遅れとなってしまっているのではないか。

そう考えると、少子高齢化という毒が今、社会のあちこちに噴き出しているのだという見方もできるはずだ。岸田文雄政権が少子高齢化に対してどのように考えているのか分からないが、あまり真剣に考えているような様子は見えない。

とすれば、この問題は事実上「放置状態」に置かれて、日本は衰退していく一方になってしまうのだろう。そして、技術についていけない高齢者トップがより社会を時代遅れにして、日本を立ち枯れさせてしまう。

私は少子高齢化を解決できない日本で、大量の移民が日本を食い荒らす悲観的な将来像を見ている。今のままではそうなっていく。

『どん底に落ちた養分たち――パチンコ依存者はいかに破滅していくか(鈴木 傾城)』
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