情報軽視国家。日本はまるでコンピュータの存在を知らない途上国のようだ

情報軽視国家。日本はまるでコンピュータの存在を知らない途上国のようだ

社会全体が超高度情報化社会に遅れているというのは、社会の大多数を占めている高齢者に社会が合わせているからであるとも言えるが、それにしても「出遅れ」は尋常なものではない。日本はまるでコンピュータの存在を知らない途上国のようだと感じることもしばしばだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

日本社会全体が最先端をうまく扱えなくなっていることの証拠

マイナンバーカードを健康保険証として使えるようにするということで、政府は3月からの運用を考えていた。ところが、うまくいかない。

いざやってみると『マイナンバー(個人番号)の誤入力などで情報のひも付けや番号の表示に不具合があった』ということで、本格実施は10月に延期されることになった。

データが一元化されておらず、さらに言えば「絶対に間違ってはいけないはずの公的なデータ」に誤入力が多発しているのだ。これは、身分証明書がまったく身分証明になっていないという深刻な状況である。

これは単なる「データの誤入力の問題」ではない。最近、日本ではLINEのセキュリティ問題も起きたが、ソフトウェアやシステムの問題が続出しているのは偶然なのだろうか。

  • 接触管理アプリCOCOAで4ヶ月もバグが放置された。
  • みずほ銀行でシステムが何度も何度も停止した。
  • LINEのシステムで情報漏洩が起きていた。
  • マイナンバーカードがうまく運用できていない。

どれも重要なシステムだ。そのシステムの度重なるトラブルは、日本社会全体が「最先端をうまく扱えなくなっている」ことの証拠であるとしたら、これは由々しき問題であるとも言える。

今後、世界は「超」高度情報化時代に入る。

ビッグデータ(莫大なデータ)からいかに必要な情報を引き出し、いかに兆候を見出し、いかに諜報に役立て、データから上がって来た分析結果をいかに迅速に社会に取り入れるかが生き残り戦略で重要になる。

欧米や中国がクラウドに邁進しているのも、クラウドによるデータ収集とデータ解析と戦略立案が最重要事項であり、国の未来を制すると分かっているからである。

にも関わらず、日本社会は基幹システムやインフラになるソフトウェアやデータ管理すらもうまく扱えないくらい「ハイテク音痴」の国になろうとしているのだ。

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中国が集めているのはまさに「全世界の人間の全プライバシー」

中国がなぜこれほどまで全世界の情報を盗み取ろうとしているのか。莫大な情報は「宝の山」だからである。

この意味が分からなければ、グーグル検索を思い浮かべて欲しい。

Google検索で検索したら何でも出てくると私たちは考えるが、グーグル検索でも実は出てこない情報がある。たとえば、私たちはお気に入りの芸能人の住所や戸籍や保険証の番号やマイナンバーカードの番号を知りたいと思ってもGoogle検索でそれを引っ張り出すことはできない。

Google検索は個人情報を検索しても本当にセンシティブな個人情報は出てこないのである。

そこで想像して欲しい。

もし、ある特定の個人の顔写真・住所・本名・本籍・戸籍・家族リスト・住所録リスト・銀行口座の番号・貯金額・日常の会話・隠している写真等々をすべて、検索ひとつで出てきたとしたらどうだろうか? 検索ひとつで、その人のプライバシーをすべてのぞけるとしたらどうだろうか?

「いくら隠し事がない」と豪語する人であっても、「これはマズい」ということが分かるだろう。しかし、中国が集めているのはまさに「全世界の人間の全プライバシー」なのである。

ハッキングによって個人情報を盗むだけでなく、ファーウェイの基地局のルーターに情報漏洩の仕掛けを作ったり、中国製のクラウドを普及させたり、スマートフォンのアプリにバックドアを仕組んだりして、莫大な情報を吸い上げる。

そして、そのビッグデータをインデックス化して「検索ひとつ」で個人情報がすべて引き出せるようにする。中国共産党がそれを見る。

LINEは中国で作られたアプリであり、中国はシステムの中身を知っている。さらに韓国にあるサーバーにアクセスすることもできた。中国共産党は「検索したら日本人の全情報」を閲覧できるはずだ。

その情報で、中国共産党は誰かの情報を書き替えたり、漏洩させたり、脅迫したりして、たとえば政治家や財界の重要人物を中国共産党の走狗《いぬ》にしたり、情報を漏洩させて破滅させたりすることができるようになる。

莫大な情報は「宝の山」だとアメリカや中国は知っている。

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日本は、いくら何でもやっていることが前近代的過ぎる

日本はなぜか政治家から事業家から国民まで、揃って情報の価値がまったく分かっていない民族である。

日本人はハードについては非常に強い。製造や造形物に関しては、世界有数のこだわりを持つ民族であるとも言える。

ところが、なぜか情報についてはまったく重要性を認識しない。その延長線上にソフトウェア軽視があって「ソフトウェア途上国」となっている。この点に関しては唖然とするほどひどい。

社会全体が超高度情報化社会に遅れているというのは、社会の大多数を占めている高齢者に社会が合わせているからであるとも言えるが、それにしても「出遅れ」は尋常なものではない。

役所に行けばいまだに住所や氏名や電話番号は「手書き」でやらせる。何枚も何枚も手書きさせて、ハンコを押させる。

引っ越しなんかしようものなら、転入届、住所変更届、印鑑登録、マイナンバーの住所変更……で、何度も住所・氏名・生年月日・電話番号等々を書かせられる。挙げ句の果てに、住所をカタカナで書けとも言われる。

不動産の契約も、保険の契約も、やはり同じだ。似たような書類を何枚も何枚も出してきて、1時間近くも住所・氏名・生年月日・電話番号等々の個人情報を延々と書かせられる。

こういう手続きをやらされているうちに、「日本の社会は昭和で時代が止まっているのか?」と疑問を感じざるを得ない。いくら何でもやっていることが前近代的過ぎるし、まるでコンピュータの存在を知らない途上国のようだ。

日本企業で、MicrosoftやAdobeやAppleやFacebookやAmazon等々のように、全世界の人々が使う「世界に通用するソフトウェア企業」はいまだ一社も聞かないし、生まれる兆しも見えない。全世界に通用するほどのクラウドもない。

能力がないのではない。能力はある。しかし、ソフトウェアの重要性がまったく分かっていないので、政財界も国民もそこに死にもの狂いで注力しようとしないのである。

このままでは日本は本当の意味で途上国になる。ここから挽回するためには、日本は「情報」の重要性を教育から叩き込む必要がある。

間に合うだろうか……。

『巨大IT企業クラウドの光と影(ロブ・ハート)』

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