岸田文雄は総理大臣になる前、「令和の所得倍増」を掲げていた。ところが、総理大臣になった瞬間に「倍増は言葉通りの意味ではない」と約束を反故にした。騙された国民は「やっぱり」と思って、ただ白けた目で岸田首相を見ているだけである。政治?誰も何も期待していない。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com
人気のある政策を掲げるが当選したら忘れる
多くの政治家は、自分自身や自分の政党の利益を追求するために行動しているように見える。
実際はそうではない素晴らしい政治家がいるというのは誰もが承知している。しかし、全体から見ると非常に少数か、あるいは表に出てこられないような状況であるので、存在価値がとても小さい。
現実には、私利私欲と党利党益だけで動く人たちが大きな割合であり、それが「政治の中心」として目立つ。
彼らは、選挙で勝利するためだけに人気のある政策を掲げたりするが、当選した瞬間にそれを忘れる特技がある。例えば現在の岸田首相も総理大臣になる前は「令和の所得倍増計画」みたいなものを掲げていた。
ところが、総理大臣になった瞬間に「倍増とは言葉通りの意味ではない」みたいなことを言い出すのである。「金融所得倍増」とも「資産倍増」とも言った。そんなものはすべて嘘だった。
国民は「騙された」のだ。
しかし、騙された国民は「約束が違うじゃないか」と総理大臣に詰め寄ることもなければ「どうなっているんだ」と抗議デモをすることもない。「やっぱり」と思いながら、ただ白けた目で岸田首相を見ているだけなのだ。
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こんな馬鹿馬鹿しい政治に何を期待したらいいのか
日本国民は岸田首相だけに幻滅しているわけではない。与党も野党もすべてに期待していない。自民党もそうだし、他の野党もそうだが、どこに所属する政治家もロビイストや特定の利益団体の影響下にあって、国民を見ていない。
しかも、その特定の利益団体というのが日本以外の国の利益団体だったりする。そういうのがチラホラ見えてくると、日本人のための政治をしてくれていないように見える。
さらに岸田首相もそうだが、彼らは日本国民には増税ばかり強いていながら、外国に行くたびに効果があるのかないのか分からないようなところに金をばら撒いている。こういうのを見ていると、「外国で良い顔をするのであれば、もっと日本人のことを考えろ」という不満も湧き上がって当然だ。
国内問題をしっかりしていないのに外交ばかりやられても仕方がない。
そういうわけで、有権者はもう政治に疑念を抱くようになってしまっており、「期待するだけ無駄だな」という気持ちを確信にまで深めてしまっている。
そもそも最初から、自民党も野党も大して仕事ができるようにも見えない。少子高齢化にしても、数十年も前から「このまま放置していたら日本は亡国の未来しかない」と警鐘が鳴らされていたはずなのだ。
にもかかわらず、放置して亡国の道を歩んでいるだから、日本国民からしてみたら「馬鹿か」と言うしかない。
それで、どのように解決するのかというと、消費税を上げるとか社会保険料を上げるとか、国民負担率を引き上げるような愚策ばかりをダラダラと検討している。
国防にしても、中国がどんどん脅威になるのを傍目で見ながら何もせず、今頃になって「国防のために増税する」とか言い出している。問題を解決するしない以前に、なんでも増税に結びつけるのである。
こんな馬鹿馬鹿しい政治に何を期待したらいいのか……。
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選挙が面白半分のおふざけに堕してしまった
野党は野党で自民党の揚げ足を取ることばかり考えている。大臣が何を食べたとか食べてないとか、くだらないことに終始している。
どの政党もそんなのばかりである。
いや、もしかしたら小さくても、何か素晴らしい政策を掲げて真面目で真摯に頑張っている党もあるのかもしれない。しかし、組織が脆弱なので、万一何か間違えて政権を取ったとしても、統治能力があるようには見えないと日本国民はとらえている。
そんなわけで、日本国民は選挙のたびにあれこれ考えながら、有権者の半分はもう選挙にすらも行かず、残りは「消極法で自民党」とか言って、相変わらず自民党に入れるのである。
もしかしたら他に選択肢があるのかもしれないが、安全を取るとしたら「自民党しかない」と思ってしまうような現状になっている。だから、もはや日本は選挙は行われていても、実質的には選択肢がないような状態である。
選択肢がないのであれば、もう犯罪者だろうが、炎上芸人だろうが、頭のおかしな馬鹿だろうが、面白そうなのは何でも入れておけばいいという話になって、選挙が面白半分のおふざけに堕してしまった。
結局のところ、何をしたところで政治は変えられないし、変わらないし、意味がないので、選挙も適当にやっているだけになったのだ。これが日本の現状である。
まだ形式的に選挙が機能しているフリをして、民主主義が機能しているような体裁を整えているのだが、中身はスカスカだ。どう見ても末期症状にしか見えない。どこから見ても日本の政治は機能不全に陥っていると言うしかない。
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日本の未来にも期待できない領域に入ってきた
まともな有権者はもう政治に期待することは完全にやめてしまっている。それもそうだ。理性的かつ包括的に現在の状況をきちんと把握できる人であれば、誰でも「もう政治に期待しても無駄だ」と思う。
自民党も日本を30年も成長させることができないような駄目な政党である。
これまでずっと駄目であった以上、これからも「絶対に」日本を成長させることができない。30年も能力がなかった政党が31年目から急にすごい能力に目覚めるような漫画みたいなことは起きない。
どう贔屓目に見ても現状維持さえ難しい。駄目な政党に任せて現状維持ができると思う方がどうかしている。現状維持どころか、これからもっと悲惨なことになっていくのがオチだ。
なぜなら、少子高齢化も止まらないし、増税は止まらないし、貧困化も加速するからである。これらが負のスパイラルとなって、すべての面に関して日本社会を悪化させていく。そして、能力のない自民党はそれをさらに悪化させるばかりとなる。
そんなわけで、日本の政治はもはや笑えないほど駄目なので、政治にはもはや何も期待できないばかりか、日本の未来にも期待できない領域に入ってきた。
そうであれば、私たちはどうしたらいいのだろうか。
私たち日本国民はみんなまとめて坂道を転がり落ちているのだが、もはやそれを止める方法はなくなった。それは現状把握として知るべきことである。
もう政治に期待して日本が良くなることを望むとか、どこの政党に入れれば日本が良くなるとか、誰に票を入れたら日本が良くなるとか、そういう「希望のある段階」はとっくに終わっている。
政治の現状を見ても、社会の閉塞感を見ても、人口動態を見ても、大体は日本が末期症状の国になっていることを示唆している。だとしたら、「未来に希望を持ってはいけない」ということにになる。いよいよ手遅れになったのだ。
まずは「手遅れになった」という認識だけは持っておきたい。今後の人生は、この大前提を元にして組み立てていく必要があるのだから……。