
アメリカを動かしているのは政治家ではない。現代の資本主義の中で「重要なプレイヤー」は、政治家ではなく巨大企業なのだ。アメリカの場合は、政治家もまた企業経営に関わっており、早い話が多国籍企業の代理人だ。彼らの本当の正体は、「政治家」というよりも「代理人」なのである。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
世界は、改めて巨大ハイテク企業のパワーを思い知った
トランプ大統領は、TwitterからもYouTubeからもFacebookからもInstagramからも、ほぼすべてのプラットフォームでキャンセル(排除)された。これによってトランプ大統領の発言はほぼすべて言論封殺されて、トランプ大統領は手足をもぎ取られたような状態になってしまった。
トランプ大統領の武器は「情報」だったが、この情報の根幹を担うのがアメリカの巨大ハイテク企業であった。ここを敵に回すと大統領でさえもキャンセル(排除)されて何もできなくなる。
世界は、改めて巨大ハイテク企業のパワーを思い知った。
高度情報化社会の中においてはインターネットは最重要インフラである。インターネットは全世界を結びつけており、すでに情報の世界ではグローバル化は達成されている。そして、そのインターネットの根幹を握っているのがアメリカ企業である。
Appleも、Googleも、Amazonも、Microsoftも、Facebookも、IBMも、Oracleも、Adobeも、すべてアメリカ企業である。情報の中核になる技術とイノベーションの種はすべてアメリカが所有している。
インターネットがない世界はもう考えられないわけであり、それをアメリカが押さえているという意味は非常に重要だ。
さらに今後はAI(人工知能)の技術が急激に台頭し、世の中を変えていくことになるのだが、こうした技術もアメリカのハイテク企業が世界をリードしている。
中国が台頭していると見る人もいるのだが、中国は知的財産の侵害によって成り上がっているだけで何も生み出していない。
まして、事業家ジャック・マーのアリババやアントを見ても分かる通り、中国共産党政権に都合の悪いイノベーションは潰されるので、世界をリードする体制にはなっていない。
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アメリカを動かしているのは巨大なパワーを持つ多国籍企業
コロナ禍の中、いち早くワクチンを開発したのもアメリカだった。ファイザーやモデルナのワクチンは現在、人類が最も必要としているものである。中国もワクチンを開発しているのだが、中国のワクチンは例によって全世界のワクチンの開発を全力で盗んだ結果できたものである。
製薬の分野でも、世界はアメリカの巨大製薬企業に頼っているのだ。
J&J、ファイザー、メルク、アボット・ラボラトリー、アッヴィ、イーライリリー、ブリストル・マイヤーズ スクイブと言った巨大な製薬企業はもちろんアメリカ企業である。これらの企業は凄まじい売上を上げ、成長し続けている。
今後はバイオも医療の中心に食い込んでいくが、そのバイオもアムジェンやギリアド・サイエンシズやアラガンのようなアメリカの企業が突出している。
軍事ではどうか。もちろん、世界最大の軍事企業を抱えているのはアメリカである。ロッキード、ボーイング、レイセオン、ノースロップ・グラマン、ユナイテッド・テクノロジーと、多くの企業が夥しい関連会社を配下に、世界最強の軍産複合体を作り上げている。
別に深く考える間もなく、現代の資本主義の中心はまぎれもなくアメリカである。そして、そのアメリカを動かしているのは巨大なパワーを持つ多国籍企業なのである。
アメリカを動かしているのは政治家ではない。現代の資本主義の中で「重要なプレイヤー」は、政治家ではなく巨大企業なのだ。
アメリカの場合は、政治家もまた企業経営に関わっており、早い話が多国籍企業の代理人だ。彼らの本当の正体は、「政治家」というよりも「代理人」なのである。
ジョージ・ブッシュ元大統領がカーライル、ディック・チェイニー国防長官がハリバートン、コンドリーザ・ライス国務長官がシェブロンに関わっていたのはよく知られている。
オバマ大統領の資金はゴールドマン・サックス、シティ・グループ、JPモルガン・チェース等の金融資本であったことは有名だ。
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多国籍企業には「国益」など眼中にない
ドナルド・トランプ大統領は唯一、多国籍企業の代理人とならずに、真の意味で「アメリカ・ファースト」に突き進み、多国籍企業ではなくアメリカの一般国民のために政治を行った大統領だった。
しかし、トランプ大統領は言論封殺されて最も重要なインフラからキャンセル(排除)されるという結末となった。
国民がいくらトランプ大統領を支持しても、社会の根幹を巨大企業が支配し、さらにインターネットについてもそのプラットフォームは巨大企業が掌握している以上、まったく太刀打ちできない状況になっている。
アメリカ軍も、結局は多国籍企業が提供する装備によって成り立っているわけであり、多国籍企業に何ができるわけでもない。
トランプ大統領の「アメリカ国民のための政治」は、今後は「アメリカ企業のための政治」に置き換えられてしまうのは間違いない。
ジョー・バイデン新大統領は、トランプ大統領が行った「アメリカ・ファースト」を容赦なく捨てていく。そして、多国籍企業と密接に関わるエスタブリッシュメントたちが、バイデン新大統領と一緒になって自らの利益を追求していく。
その過程で、彼らは中国が自分たちの金儲けに役に立つと思ったら、いくらでも中国と手を結ぶだろう。多国籍企業には「国益」など眼中にない。自らの「利益」だけがある。利益のためには何でもする。そういう存在だ。
だから、大統領が多国籍企業の代理人であれば便利なのだ。
世の中の何がどう動くのかは大統領は知っているわけだから、彼らを代理人にしている投資企業が抜け目なく動けるのは当然のことである。矢面に立っているのは政治家だが、政治家は多国籍企業の代理人となって動いているのだから、アメリカの「中枢」は政治にはない。多国籍企業にある。
世界の資金はアメリカに集まっており、NYSE(ニューヨーク証券取引所)は世界最大の市場である。すでにアメリカの株式市場の指数はコロナショックの大暴落を克服しており、現在もさらに膨らみ続けている。
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アメリカの株式市場はどんどん成長していく
アメリカが衰退したと言う人もいるが、「アメリカ企業」という視点で見るとそれは事実ではない。アメリカの衰退は「アメリカの政治」と「アメリカ人」を見る限り事実なのだが、「アメリカ企業」という視点から見るとまったく別の光景が見える。
衰退どころか、まだ恐ろしいほどの成長の余地がある。
アメリカの政治家が米国企業を利するために政治を行うのは、表側から見れば「アメリカの政治家が愛国者だから」ということになるが、裏側から見れば何のことはない「企業の代理人だからだ」ということになる。
このアメリカの多国籍企業がアメリカの政治家を自由自在に操ってグローバル化を推し進め、資本独占を目指していく。
「アメリカが衰退する」という言葉を私たちはこれからも聞き続けることになるが、「アメリカ」とは3つのパートがあることを忘れてはならない。
アメリカとひとことで言っても、そのアメリカは「アメリカ国家」と「アメリカ企業」と「アメリカ国民」の集合体である。これらすべてをまとめて私たちはアメリカと言っている。
かつて、「国家・企業・国民」は三位一体で切り離せないように思えた。しかし今は「企業」がひとつの独自生命体のようにいびつに成長し、もう三位一体ではなくなっているのだ。
アメリカ企業がグローバル化し、極度なまでに多国籍化したので、アメリカ企業の成長がアメリカ国家・国民の成長とは合致しなくなってしまったのだ。
アメリカの巨大企業は、アメリカという殻を抜け出して独自の生命体と化した。そのためにアメリカ企業は、アメリカの国家と国民から富を吸い取り、ひとりで膨れあがっている。
アメリカの巨大多国籍企業は、アメリカを乗っ取った。だから、アメリカ国家とアメリカ国民は痩せ細っていく一方だが、逆にアメリカ企業は肥え太っていく。短期的に見ると、コロナ禍もあってアメリカの株式市場は不安定かもしれない。
しかし、長期で見ると、アメリカの多国籍企業の独占的支配は今後も続くので、アメリカの株式市場はどんどん成長していくことになる。
ジョー・バイデン新大統領は、多国籍企業の操り人形として使われる。
