もう慣れすぎて人々は麻痺してしまっているが、そもそも広大なインターネット領域から、検索ボックスに打ち込んだ情報を瞬時に提供できる技術そのものが脅威なのである。Googleが邪悪になってしまったら、私たちは「終わり」なのだ。太刀打ちなんかできない。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
それは、プライバシーをすべて盗まれているということ
Googleはサービスを無料で使わせる代わりに、大量の広告をユーザーに送り届ける。Googleは「全世界で最もうまく広告を表示することができる企業」であり、それで超巨額の時価総額を誇る企業へと変貌した。
現在、Googleの時価総額は約150兆円である。150兆円というのは尋常な数字ではない。モンスターである。世界で最も広告をうまく扱うことができるGoogleは、今後も世界に君臨し続けることになるはずだ。
しかし最近、このGoogleは大量の広告を「押し付ける」がゆえに人々に嫌われるようになっている。
Googleはブラウザ「chrome」でシークレットモードにしているにも関わらず個人情報を収集していたとして約5000億円の集団訴訟を抱えている。これを見ても分かる通り、Googleがなりふり構わず個人情報を収集しているのが分かる。
なぜここまでして個人情報を収集するのか。それは、手に入れた個人情報でユーザーが何に関心を持っているのか分かるからだ。
たとえばユーザーが男性で最近、ハワイの情報ばかりを検索しているとすれば、飛行機のチケットの広告を出すとか、ホテルの広告を出すということができる。
ユーザーが20代であればハワイのクラブの広告を出せば関心を持ってくれるかもしれないし、40代であれば落ち着いたレストランの広告を出せば関心を持ってくれるかもしれない。
そういった情報を積み上げていくと、Googleはユーザーが「いま何を欲しているのか」を簡単に推測できる。それは確かに便利だ。しかし、プライバシーをすべて盗まれているということでもある。
私はGoogleが今よりもさらに正確な広告を出す能力があるが、実はわざと「的確過ぎる具体的な広告を出さない」ようにしていると考えている。あまりにもピンポイントで的確過ぎる広告を出すと「私生活をのぞかれている」と疑われるからだ。
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Googleが邪悪になってしまったら、私たちは「終わり」なのだ
Googleは私たちのすべてを知る能力がある。Googleで検索し、Googleのメールサービスを使い、Googleのクラウドにファイルや写真を保存し、YouTubeでいろんなものを視聴していると、仕事からプライベートまでのすべてをGoogleのサービスで完結していることになる。
その履歴をすべて保管したら、Googleは私たちの人生のすべてを掌握することができるのである。本人が忘れたことでもGoogleは知っている。だから、私生活をのぞくどころか人生をのぞくこともGoogleはできる。
超ピンポイントな広告を出すことくらい、Googleにはたやすいことだろう。しかし、それをしてしまったら警戒心を与えることになるので、あえてやらないでユーザーを逆に安心させているように見える。
Googleは以前、子会社ディープマインドの人工知能であるAlphaGo(アルファ碁)がプロ棋士をメタメタに打ちのめして泣かせてしまったこともあって、人工知能が脅威だと思われるのを懸念して以後はいっさい対局をしなくなった。
やってもやってもAlphaGoが100%勝つのなら、Googleは世界から恐れられるだけで何のメリットもない。
ずば抜けた能力をGoogleは手にしているのだが、それをあえて隠している。Googleの技術はそれほどまで恐ろしい領域にまで達しているとも言える。
もう慣れすぎて人々は麻痺してしまっているが、そもそも広大なインターネット領域から、検索ボックスに打ち込んだ情報を瞬時に提供できる技術そのものが脅威なのである。
Googleが邪悪になってしまったら、私たちは「終わり」なのだ。太刀打ちなんかできない。
しかし、それが分かっていても私たちはGoogleから離れられない。そのサービスはあまりにも便利で、なくてはならないものである。そして、Googleの提示する広告はそれなりに役に立ったりするので迷惑という気もしない。
企業もまた購買層に的確に広告を届けてくれるGoogleに依存する。
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もう私たちの社会はGoogleによって支配されており逃げられない
Googleも民間企業であり、いつかGoogleよりも広告をうまく扱える企業が出てきたらGoogleは今のような独占的な地位は失うのは当然だ。
しかし、今のところGoogleに挑戦できるほどのイノベーションを生み出そうとしている企業は片鱗も見当たらない。
最近、Brave Softwareがプライバシー最優先の検索エンジンを売り出しているのだが、Googleの牙城を崩すのはまだまだ難しい。
広告に依存していない企業としてAppleがやはりプライバシーを重視した検索エンジンを開発しているのではないかと言われている。それが事実だとしても、果たして専業のGoogleに検索で勝てるだろうか……。
人々はGoogleの脅威を知りつつも、それなりに的確な広告を出してくれるGoogleには便利さを感じて、そのままGoogleを使い続けるのではないだろうか。
現代社会は人々にモノを買わせなければ機能しないシステムなので、これからも広告社会は途絶えることはない。
私たちは日常生活の中で、何かしらの刺激を求めている。外部の世界に「何か面白いことはないか?」と常に目を配っている。広告はその「面白い刺激」を告知するものなのだ。
広告の洪水は誰もが迷惑であると思うのだが、それでも無意識に面白い刺激を求めている現代人は広告から離れることができない。私たちは広告と共に生きていくことになる。
その広告を最もうまく扱える世界最強の企業がGoogleなのだ。だから、Googleは現代社会における強大な企業になっている。
Googleが広告によって世界を動かしているという認識を持つのは重要だ。世界は消費で動いている。その消費の渇望を凄まじく刺激するのが広告で、その広告を手中に収めたのがGoogleなのである。
Googleから逃れようと思っても無駄だ。もう私たちの社会はGoogleによって支配されており、誰ひとりとしてそこから逃れられないように囲い込まれている。考えてみたら恐ろしいことでもある。
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私たちはこれらの企業に一生を支配されるのか?
Googleが神であれ悪魔であれ、私たちはもうGoogleから逃れられない。欲しいものがあった時、私たちはGoogleによって選択肢が与えられる。Googleで知り、Googleで選び、Googleに導かれて決めるのである。
自分で何かを選択したかのように思えるかもしれないが、Googleが選択したものを私たちは「選ばされている」のかもしれない。Googleが意図的に検索エンジンに出さなかったものは私たちの中には存在しなかったも同然だからである。
Googleは巧みに私たちに選択を誘導しているかもしれない。しかしGoogleはあまりにも巧妙なので、私たちはもう区別ができなくなっている。
本当は欲しくないものも、私たちは操られて自由自在にGoogleによって購買意欲を刺激されている局面もあるだろう。
広告を出しているのは一般の企業だけではない。銀行やクレジットカードの会社も、当たり前のように大量広告を打って人々に消費を促している。それをGoogleがうまく提供する。
そんな状況なので、人々の消費が止まるはずがない。
情報化時代が加速している今、広告による消費の煽動はさらに過激化していく。それは何をもたらすのか。
今でも消費欲を極限まで刺激されている現代人なのに、もっとひどい状況になるということだ。私たちは、知らない間にありとあらゆるモノが欲しくてたまらなくなり、欲求不満で爆発してしまうような精神状態になっていく。
Googleが広告をあまりにも巧みに届けるようになって、人々は否が応でも消費に狂っていく。もうあなた自身がそうなっているのかもしれない。
そうであっても無理もない。現代社会は、欲しいという渇望を消せないようになっているからだ。もう私たちは、逃れられない。そして、ふと気づくと広告を大量に私たちに届ける企業であるGoogleが全世界を掌握するほどの利益を手に入れているのだ。
Googleに私たちは一生を支配されるかもしれない。
それほどの支配力がこの企業には、ある。